氷上郡天台宗寺院会報
(どうしん)
・・・第3号・・・


◆宗教音痴の日本人◆

 『日本人は宗教音痴だ』と書かれている本がありました。ある旅行社が、海外旅行時にアンケートを行いまし
た。その中に「あなたの信仰している宗教は何ですか?」という質問があり、外国の方はキリスト教やイスラム
教、ユダヤ教等と答えたそうです。
 
 しかし日本人は「なし」との答えが多く、この人たちにもう一度「無宗教ですか?」と尋ねると、実は『仏教徒』であったことがわかったそうです。
 キリスト教などを信仰している方は「私は 神の子である」とか「す べては神のお導き」と よく言われます。それは、神と人間との間に ある目に見えないつな がりをしっかりと自覚 しているからです。
  ところが、信仰して いる宗教は「なし」と 答える日本人は、仏と 自分とのつながりに気 付いていないのです。

◆仏教をもっと身近に◆

 『本来、人には仏性(仏になれる性質)がある』とお釈迦さまは言われています。 例えば、子どもの笑顔を見て心が和まない大人はいないでしょう。その時の子どもが大人から見ると仏であり、私たちの和む心が仏性なのです。

 仏とのつながりに気付くには、まず家庭が大切です。核家族が増え、仏壇のない家が多くなってきましたが、自分が今こうして生きていられるのはご先祖さまのお陰であり、ご先祖さまを思い供養することにより、仏とのつながりの自覚が深まるのです。

 そして、お正月、節分、ひなまつり、お彼岸、花まつり、端午の節句、お盆、十五夜など日本の伝統は仏教と密接に関連しており、心の拠ですから、もっと大切にして良いと思います。年中行事や宗教行事を通して、子どもたちに感謝や祈りの心を育んでほしいものです。

 また、日々の生活の中において、目に見えるもの、耳に聞こえるもの、鼻や舌や肌に感じるものなど、五感に一つでも仏さまを感じた時、私自身が『仏教徒』だという自覚がさらに深まるのです。
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「寺門興隆 正福寺で慶びの盛儀」

◆第二十七世法灯継承晋山式を挙行 ◆
 通称「まるやま」と呼ばれ親しまれている春日町下三井庄の圓龍山正福寺で、第二十七世法燈継承晋山式が執り行われた。

 最初に、前住職である荒樋勝善師の退山式が行われ、総本山特使の中野寶元兵庫教区宗務所長より前住職に解任辞令を伝達。続いて無事に職務を全うできた感謝の意を込めて厳粛に読経が行われた。

 次に、早形佐重総代より前住職に対する十五年間の労をねぎらう御礼の挨拶と記念品授与があり、法子婦人には檀信徒一同からの感謝の花束が門前舞香ちゃんより贈られた。この後、退山の挨拶に立った前住職からは「後任住職の晋山式を迎えることができ、先代住職(故・桑谷英海師)との約束が果たせてほっとした」と心情が語られた。


 続いて、新たに第二十七世住職となられる荒樋昇誠師の晋山式が行われた。
 晋山式の「晋」とは進むという意味。山に進み入る式で、このたびは新住職が圓龍山正福寺に正式に初めて入る就任の儀式である。

 福岳登美雄総代長を先導に、出仕の僧侶・新住職・侍者と山門をくぐった行列は、散華をしながら来賓や檀信徒が見守る堂内へ。  まず、総本山特使の中野所長より住職辞令の伝達。前住職より法具や過去帳を新住職が引き継ぐ法燈継承の儀と続いて、晋山をご本尊に報告する法要が厳かに営まれて行った。

 晋山式典に移り、福岳総代長が「あきらけく、後の仏の御代までも、光伝えよ、法の灯」と伝教大師様のご聖句を引用して慶讃の辞を述べると共に、新住職に歓迎の記念品が贈られた。また恭子婦人には檀信徒一同からの励ましの花束が岡田萌ちゃんより手渡された。

 その後、来賓の祝辞があり、続いて新住職が「忘己利他(己を忘れて他を利する)の精神で努めて行きたい」と力強く誓文が述べられ、檀信徒各家の安穏と仏法の興隆を誓った一日であった。
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「山寺説法」B 
◆お墓参りと六つの行◆  安穏寺・歌道寺 住職 旭 秀海
 お釈迦さまは、生活の中で誰でもできる六つの行(六波羅蜜の行)を説いておられます。これをお墓参りに当てはめてみましょう。

 お水を供える「布施の行」。これは人々に施しをする行です。

 お香を供える「持戒の行」。清浄な香りのする樒の葉を盛ってお供えするのも良いでしょう。これは私たちが仏さまの教えを守り、心身共に清らかな生活をすることです。

 お花を供える「忍辱の行」。お花は私たちの怒りを静め、慢心を取り去ってくれます。争いのない安らかな生活を送りましょう。
 
 お線香を供える「精進の行」。お線香に火をつけて燃え尽きるまで辛抱強く努力する。要は、真心を込めて合掌することが大切なのです。
 
 お供え物をする「禅定の行」。これは、亡くなられた方の喜ばれそうなお供えで心身共に安定させ静寂にする行で、心の安らぎを得るのです。
 お灯明を供える「智慧の行」。これは迷い多き人間の心を智慧の光によって明るくするものです。
 
 これらの供養をすることで私たちのご先祖さまは喜ばれ、真心を込めて供養する心が先祖供養の心です。


「仏教行事の解説」―2―
◆花まつり◆
 四月八日、お釈迦さまの誕生をお祝いする行事です。

 仏典によると、お釈迦さまのお母さまの摩耶夫人は、出産に備えて里帰りされようとしました。そしてその途中、ルンビニーの花園でお休みになられました。すると、そこで摩耶夫人は産気づかれ、お釈迦さまがお生まれになったのです。

 お釈迦さまは、お生まれになると確かな足取りで七歩歩まれ、天地を指さされて「天上天下唯我独尊」と宣言されました。するとその時、世界中が光り輝いて、空に美しい音楽と歌声が流れ、天にいる竜が甘露の雨を濯いで、お釈迦さまの体を清められました。

 お釈迦さまが天地万物の祝福を受けてお生まれになったように、私たち一人ひとりも周りの祝福を受けて生まれてきたのです。幸せになってほしいという願いの込められた、このかけがえのない命をどのように活かしていくかを考えてみる行事です。

 丹波地方では月遅れの五月に行われます。各寺院にお問い合わせの上、お参り下さい。


「我が家は天台宗」
◆第3話  天台宗の基本◆
 今号は、日本の天台宗について、基本的なところを説明します。
 
 開祖(開いた人)⇒伝教大師・最澄(七六七〜八二二)。伝教大師は中国の天台大師・智によって確立された天 台宗の教えを伝え、比叡山で日本の天台宗を開かれました。
 
 教えの特徴⇒日本の天台宗は、法華経の「すべての人は仏の悟りを得ることができる」という教えに基づき、密教 ・座禅・念仏・戒律など、仏のあらゆる教えを統合した宗派です。その故に日本仏教の根源の教えとなりました。
 
 本尊⇒全国約三千の天台宗寺院のご本尊は阿弥陀如来、薬師如来、大日如来、観世音菩薩、地蔵菩薩、不動 明王など様々です。しかし、それらは皆、永遠のいのち、無限の力を備えられたお釈迦さまが姿を変え、私たちを  救うために出現されたものです。
 
 読むお経⇒『法華経』が根本の経典ですが、『阿弥陀経』や『般若心経』など多くの経典を読みます。「朝に法華経 を読み、夕には念仏を唱える」と言われます。
 
 総本山⇒比叡山・延暦寺(滋賀県大津市)。


「仏教Q&A」@
 Q.お寺さんはなぜ丸坊主?
 
 A.髪や髭は飾りであり、出家して仏門に入る時、すべての飾りを取り去る意味でこれらを剃ることが必要なのです 。古くはインドの修行者の習俗であったのが、仏教に取り入れられました。中国では、父母からいただいた大切な 身体をあえて傷つけることは良くない、として批判されたこともありました。しかし、仏教では戒律を守ることが最も 重視され、仏門に入る時は必ず髪を剃り、以後も定期的に行うように定められました。
 丸坊主は清潔で手間もかかりませんし、いいものですよ。似合う似合わないはあるかもしれませんが…。

「寺院さんぽ」―B―
◆金力山  歌道寺◆  氷上郡春日町黒井2282-2    旭 秀海 兼務住職
 歌道寺はJR黒井駅の北方間近に聳える城山の麓にあり、山上には黒井城趾がある。
 戦後間もない昭和二十九年、時代に先駆け社会福祉に心を砕いた前住職の海應師が、境内に養老院を開設。今では立派な老人ホーム「三相園」が建ち、入口の「一隅を照らす」の碑が目を引く。
 歩を奥に進めると錦鯉が群れる相念の池、その上に阿弥陀如来を祀る本堂がある。往時は、亀山藩の祈願寺として隆盛を極め、またその城主との縁を偲ばせる位牌も並ぶ。



「編集後記」
 鯉のぼりが青空を優雅に泳ぐ端午の節句。子どもの健やかな成長を願うのどかな日本の風物詩だ。一方、目を国外に転じてみよう。三月に始まったアメリカ軍等によるイラク攻撃。この戦争から生まれるものは何であろうか?。

 十二年前の湾岸戦争でアメリカ軍は劣化ウラン弾という放射性兵器を使った。この影響により、現在では実に三%の割合で障害児が生まれ、昨年末までに約一五〇万人(内六二万人は五歳未満の子ども)が亡くなった。放射能の半減期は四十五億年。イラクの子どもたちは永遠に呪われてしまったのだ。
 
 平和と平等を説く仏教徒である私たち日本人が果たす役割は何なのか。子どもを思う親心はどこの国でも同じはず。皆さんはどう思われますか?。是非共ご家庭で話し合う機会を…。ご意見・ご感想をお待ちしています。